日本語入力を楽にする!マイナー配列のススメ かな配列編

 さて、今日のテーマは「マイナー配列を使ったことのない人、知らなかった人に配列を紹介する」の2回目、「かな配列編」です。
かな配列「編」ということは前回もあります。下のリンクからどうぞ。
日本語入力を楽にする!マイナー配列のススメ 行段系配列編


 日本語配列にはいろいろ種類があって、一般的なローマ字配列からかな打ち、中には漢字を直接(変換せずに!)打ち込むなんて方式まであったりします。それこそ多種多様。
 
 その中で、今回は「かな打ち」のための「かな配列」に焦点を当てて紹介していきたいと思います。

 

1.1 親指シフト

 親指シフト……別名「NICOLA」なんて言ったりもします。ローマ字などしか使ったことのない方は「親指シフト? 親指はスペースバーだろう」と考え るんじゃないでしょうか。もしかしたら印刷できる方のワープロを使っていた方には「懐かしいなぁ」と思う方もいるかもしれません。


 親指シフトとは、既存の配列(ワープロの時代なのでローマ字入力など)よりも高効率低負荷で入力することを目的として開発された配列です。大きな特徴は、「親指キー」を用いて、すべての仮名を「1動作」で行えるようにしていることです。

 1動作というのは、最低1キー、多くても文字キーと親指キーの2つのキーを同時に打つことで1動作、ということです。通常のかな入力ではシフト入力が必要だったり、ローマ字だったら最低2打鍵になりますが、それがすべて親指シフトでは1回の動作で収まります。

 また、多くの他の配列と違い、ローマ字入力やかな入力並みに「実績」のある入力配列です。1980年に親指シフトを搭載したワープロが登場して以来、今日まで根強く利用されている配列です。ワープロ専用機ではシェアの7割を占めていたという話もあります。

現実問題、30年以上前の設計ということで現在では他の配列と比べた時に劣る部分も出てきていますが、その実績からマイナー配列の中でも実装が多く、最も人気な傑作配列と言ってもいいでしょう。
 実装方法として、Windows環境だと「DvorakJ」や「やまぶきR」が主流です。最近はWindows10になってからいろいろ入力関係が変 わったそうで、それに対応するための新たな実装も様々あるようです。開発した富士通公式では「Japanist」というものもありますが、これはすでに古 い設計なので、おとなしくDvorakJ」などを使ったほうが良いと思われます。
 
 macOSでは「Lacaille」というソフトを使うことで実装が可能なようです。少し前までは「Karabiner」というソフトで対応できたようですが、macOSのアップデートにより使えなくなっている(現状では様子見状態)ようです。
 
 Ubuntuなどでは「Libkkc」というIMEで実装できるようです。こちらは日本語のドキュメントが少ないので、どうせなら開発に参加してLinux上での親指シフト環境に貢献しても良いかもしれません。


 親指シフトに関する詳細は以下のページなどで探してみてください。

公式ページ: http://nicola.sunicom.co.jp/thumb1.html
Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%AA%E6%8C%87%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88

 

1.2 新JIS配列(JIS X 2004)

 よく「かな入力」と呼ばれていたり、キーボードの刻印に入っていたりするのは現在JIS登録されている「JIS X 6002」というもので、これはワープロ専用機の時代から様々な問題点が指摘されていました。更にそののち、親指シフトが登場したことによって決定的にJIS X 2002の存在価値がなくなるというような自体が発生します。

 そんな時に「親指シフトに負けず劣らず良い配列を新しいJIS規格にしよう!」ということで開発されたのがこの「JIS X 6004」、通称「新JIS配列」です。

 この新JIS配列、Wikipediaによると、
「実在の人間にとって無理なく・すばやく操作できる入力法を設計するために、女子大生7名を対象として延べ約380万文字分の指の運動特性の調査を行い、 『数百万字クラスの大規模n-gramデータを、数百万打鍵クラスの大規模運動特性データによって仮想打鍵する』ことにより、無数に存在する配列候補から 『各種の要求を満たす、評価の高い配列』を、現実的な設計期間で選び出せる設計手法を用いた」(一部要約)
 
というようなかんじで、おっそろしいほど膨大なデータを使い、それをコンピュータ上でシミュレーションすることで最適化された配列の原型を創りだしたというかなりすごい手間をかけて開発されたようです。

 実用上の特徴としては、親指シフトが1動作ですべての入力をしてスピード向上を目標にしたのに対し、新JIS配列はどちらかというと実用上いかに快適に使うかをメインとして開発されていることです。
そのため、「高頻度の文字は1打鍵、低頻度の文字は2打鍵、2打鍵の時は交互打鍵の効率、また前後の文字の連なりを元にして配置している」というところです。親指シフトに比べても遜色ない、負けず劣らずな配列になりました。さらに天声人語を元データにしていることもあり、熟語の連なりが考慮されて気持よく打てるということもあります。


 ただしなぜかJIS X 2003を廃止しなかったせいでワープロ機には「ローマ字入力・JIS X 200・親指シフト・JIS X 2004搭載」というような機種まで出てきてしまい、旧JIS配列に慣れていた人や親指シフトに習熟している人や新規でワープロを使う人などからシェアをうばうことはできず、1999年JIS規格から廃止されてしまいます。

  ああ哀しみの新JIS配列。なぜ旧JISではなくJIS X 2004を廃止したのか。あゝ無情。なんでこんな傑作配列が廃止されてしまったんだ。旧JISが廃止されれば今頃ローマ字入力で小指痛い打ちづらいと悩む人も相当減っていただろうに。

 というような悲劇の傑作新JIS配列ですが、現在では「Google日本語入力」(もしくはMozc)で実装することができます。さらにこの傑作新JIS配列は無駄になることはなく、後述の「月配列」にも受け継がれていきます。
 
 あとかなりWikipediaが詳しいです。やばいです。めっちゃ詳しいです。
Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0JIS%E9%85%8D%E5%88%97

 

1.3 月配列系

 悲劇の傑作新JIS配列、JIS規格から廃止されていても、まだ見捨てられてはいませんでした。掲示板「2ちゃんねる」上で、不特定多数のユーザーがアイデアを出しあい、より良い配列を作り出すという一種のプロジェクトが進行している際、この新JIS配列に光が当たることになります。

 その2ちゃんねる上で生まれた配列が「月配列」です。正確には月配列という特定の配列は存在せず、使用者各個がそれぞれバージョンを作っているというスタイルです。
 
月配列系の主な特徴として、
  • 新JIS配列を元として、シフトキーではなく中指キーで前押しシフトにする(中指シフト)
  • そのため新JIS配列と同じように高頻度の文字は1打鍵、低い文字は交互2打鍵でうてる
  • さらに様々な派生があるので自分にあった配列が探せる
  • 月配列は通常キーボードの3段10キー合計30キーしか使わないため、指の移動範囲が少なく、実装が簡単
  • 月配列系を使っている人は多いので、Twitterなどで質問したりできる
  • 高効率低負荷のものすごくバランスの良い配列
などなど、主な特徴が多すぎる配列だったりします。基本的な特徴は新JIS配列から引き継いでいるところもあるので、基本ポテンシャルが高い配列群だったりします。


主なバージョンとして、「月配列2-263」が挙げられます。殆どの月配列はこの2-263式から派生していて、初めて月配列に触れる人にはこの方式をおすすめします。

他にも各ユーザーの私家版として「月配列Ux」や「月配列E」など、様々な種類があり、実装法もそれぞれのバージョンによります。

 Wikipediaのページがなかったのではてなキーワードのページを貼っておきます。これが結構いい感じに解説されていて結構参考になったりします。また、各私家版もあるので検索するのも非常に
効果的です。


はてなキーワード:http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%B7%C3%AE%C3%87%C3%9B%C3%8E%C3%B3

 

1.4 新下駄配列

 私が知る限り通常の配列ではこの配列のスピードが最強だと思います。
 
 新下駄配列は親指シフトの同時入力と、月配列などで使われている「中指シフト」というようなシフトの考え方を取り入れた配列です。そのシフトの種類が
  • 中指シフト
  • 薬指シフト
  • 拗音シフト
  • その他同時押し
かなりあるわけです。この中で特筆すべきは拗音シフト。

 拗音シフトとは、例 えば「しゃ」とか「きょ」とかそういうものを1動作で打とうというシフトです。これによりほかの配列をスピード面で圧倒的に突き放しています。例えば 「しゃ」と打つのに親指シフトでは2動作なのに対して、新下駄配列では1動作で済むわけです。そのため拗音を含めた、「音」を重視した配列になっています。

 ただこのスピード最強タイパー御用達な感じの新下駄配列でございますが、様々なシフトがあるがゆえに習得にはかなり時間がかかると思います。おそらく今まで紹介してきた諸配列の中でも一番時間がかかるのではないのでしょうか。

 しかしこの他の配列の追随を許さない圧倒的スピード、自然な「音」を打つ感覚で、まさに喋るように打てる配列、その一種の「最強さ」がこの新下駄配列の魅力なのでしょう。

詳細は作者様のページをご覧ください。新下駄配列の原型の下駄配列を完成させてから約4年、練りに練られて開発された配列です。通常のかな入力配列の中で、最も尖った配列を使いたい、とい
う方、ぜひ使ってください。素晴らしい世界が待っています。

新下駄配列を作りました:http://kouy.exblog.jp/13627994/

 

1.5 あとがき

 かな入力方式ってすごいです。もうここまで来ると趣味の範囲で選んで全く問題ありません。

どれも素晴らしい配列です。他にも様々な配列が存在しますが、個人的には月配列をおすすめします。おそらくこの記事で紹介した中で最もバランスが取れた配列群だと思います。

でも新下駄配列の音を元にした入力も捨てがたいし、親指シフトの普及性も捨てがたい。
 
 お好きなものをお使いください。どれも習熟した日には素晴らしい世界が待っていることでしょう。